残念ながら、認知症を完全に治すお薬は現在の医療においては未だ開発されていません。そのため、ご本人にとって何が幸せで、何が取り除いた方がいい要因かということを大切にしています。
例えば認知症の中心症状としては短期記憶障害(少し前のことを全て忘れてしまう症状)が挙げられますが、ご本人にとってそれがとてもつらく悲しいことかというと必ずしもそうではありません。
もちろんご希望があればもの忘れがこれ以上ひどくならないようにという治療は行いますが、「何がなんでも元の状態に戻す」ということは不可能なので、「徘徊して家に帰ってこられなくなる」などの本人の危険を招く状態はできる限り回避するということと、ご自身で「こうなってしまったら嫌だな」と思うことがあればそれを取り除くことを念頭に置きながら、症状を緩和させることや進行を遅らせることを目指した適切な治療を行っています。